『サクリファイス』、読んだ。感想は「う〜む」。
二冊持っている『サクリファイス』、二冊目が届いてしまう前になんとか読了。
新潮社
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石尾が。。
ロードレース作品としては非常に良くできている。続編をぜひ読みたい
題名の威力
真の犠牲
読後第一感は「う〜む」。
まず本書の帯。「ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ—。」「二転三転する真相、リフレインし重さを増す主題、押し寄せる感動!」。「自転車ロードレースの世界を舞台に描く、青春ミステリの逸品」。
この帯は本書の内容をよくとらえていると思う。ただ内容の方に説得力が足りないように感じる。「二転三転する真相」の、少なくともひとつは、登場人物による無意味な情報隠蔽で生じるもの。これは「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」などにある基本原則違反。まあ金科玉条ではないけれど、主要部分にあるこの無意味な隠蔽は読者をしらけさせる。
また、「エース」の行動に説得力が足りない。本書の主人公が「アシスト」の人物であることに甘えてしまっているんじゃないかと感じてしまう。極端な行動に走る「エース」の描写不足は、ロードレースというマイナー舞台に「よくあるストーリー」を持ち込んだステレオタイプに見える。
意地悪な見方をすれば「ロードレースのことを書きたいけど、テーマがないのでミステリ形式にしました」という風に見えてしまうんだよな。「謎」が有意味に見えず、浅薄な印象を受けてしまう。
但し、ロードレース自体のことは結構うまく書けているんじゃないかと思う。ロードレース界に関することなど、さほど報じられているわけもなく、本なんかも少ない。個人的にもほとんど情報を持っていないわけだけど、少なくともそんな私には説得力のある記述だった。
「ロードレース好き」には勧められる本だとは思うんだけど、それだけに「ミステリ」部分が残念に思えてしょうがない。